最初の穴はすぐ行き止まりになっていた。次はアリの巣であった。そんなことを何度か繰り返しているうちに、ついに手応えのある穴にぶつかった。穴は垂直に10センチほど掘られ、横に続き、そこは部屋になっているらしかった。指先に丸い固い物の確かな感触がある。たかだか10センチといっても、普通のシャベルでは掘れないほど土が固いので、結構時間がかかる。
ここから先は昆虫記の言葉を引用したほうがよい。「穴の口が開き、掘り開けられたあなぐらの生温かい湿り気の中に、見事な梨玉が地面に横たわっているのが見えた。たまこがねの母虫の作りものを初めて見たこの思い出は、確かに永く心にきざまれて消えないことであろう。かりに私がエジプトの貴ぶべき遣物を掘り起こす考古学者で、ファラオの誰かの地下納骨所から、エメラルドで刻まれ、死者に捧げられたこの神聖な虫を掘り起こしたとしても、これ以上に強い感動は受けなかったであろう。ああ突然輝き出る真理の聖なるよろこぴ、これに比べられるよろこびが世にまたとあるであろうか」(岩波文庫より)
◎フランス取材中のため小諸日記の更新が滞るかと思います、そこでファーブルの生まれ故郷や虫たちを前もって準備した原稿で更新することにします。写真はほとんどが20年近く前の取材時のものです。現地からのその日のレポートも時々はいるのではと思いますのでご期待ください。
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