小諸でも日ごとに緑が濃くなりつつあるが、東京は既に、緑一色の季節を迎えている。
 公園や神社などへ行けば、東京にも緑が多いことがわかる。「東京には空がない」と言ったのはか高村光太郎の妻、智恵子であった。精神をやんだ智恵子が病床から見た空はどんなだったのだろうか。都会で暮らすことは、極度にセンシティブな人にとっては、精神が疲弊したりすることもあるだろう。
 人間、自然のなかで暮らせば、ぼくのよう単純な人間になってしまう。被写体である昆虫を眺めていると、毎日毎日が生きることに必死である。そして、自分も単純に生きたいと思うようになる。東京にも空どころか林も、草原もあるけれど、やはりそれは限られたもの、昆虫の中にもセンシティブなものがいて、都会では生きられないものもいるのである。
 けれどあまりセンシティブでない昆虫たちは都会でもたくましく生きている。そんな昆虫の一つアリの大きさになって考えたならば、都会の道ばたの草地も広大な林になる。この写真のモミジの林など、果てしなく続くアマゾンのジャングルより広大なのかもしれない。そんな話を昨年NHKの人間講座でした。今度カラー版の新書「昆虫の世界へようこそ」というタイトルで筑摩新書から発売される。